もうひとつの大きな要因は、ラッコがワシントン条約で保護されている動物だということです。

ラッコの生息域は北太平洋で、これまではアメリカからラッコを輸入していました。しかし、1998年にアメリカ政府が野生のラッコの輸出を禁止したのです。

このため、どこの水族館でも新規にラッコを飼育することはできなくなりました。

ラッコはカナダにも少数いるのですが、カナダではラッコを厳重に保護しており、最初からラッコの輸出は禁止。ほか、カムチャツカ半島にも生息していますが、ラッコはロシアでも保護されており、輸出の実績はほぼありません。

繁殖がだめなら輸入に頼ることもできなくなってしまったというわけです。

そもそも、ラッコはどうしてこんなに数が減ってしまったのでしょう。

ラッコはイタチの仲間で最大の動物です。元は北太平洋沿岸に広く生息していました。そして冷たい北の海で生きるため、とても密度の高い毛が生えています。もう、もっふもふ。

冷たい海で生き延びるため、もふもふな動物になったラッコ
冷たい海で生き延びるため、もふもふな動物になったラッコ / Credit: Wikimedia Commons

冷たい海に住む他の哺乳類と比べて体が小さく相対的に脂肪の層も薄いため、毛皮を最高にもふもふさせ、さらにその毛の中に空気をよく含ませることで暖かく保っているのです。

でも、こうした上質な毛皮と警戒心の薄さから18世紀後半から乱獲され、19世紀には壊滅的に数が減ってしまいました。20世紀初頭には絶滅寸前。

1891年と1893年、アメリカ、イギリス、ロシアが北太平洋のラッコ、オットセイの捕獲条約を締結しました。そのため、千島列島を南下して自由にラッコ猟のできる北海道、金華山沖、塩屋崎沖の領海まで進出してラッコ猟を始めたのです。

日本政府は1895年にラッコ、オットセイ猟法を公布。これは保護ではありません。外国船団にラッコを獲られてしまう前に、自国で獲ってしまえということです。