岩田が言う「あの頃」とは、2016年から2018年の間にJ3、J2、そしてJ1までスピード昇格を遂げた大分トリニータ時代のことだ。2016年に片野坂知宏氏(現大分トリニータ監督)が監督に就任すると、1年でJ3を制覇。2017年から2018年のシーズンでは2年でJ1昇格を果たしたことで話題となった。岩田はJ3からJ1までわずか3年で上り詰めた当時の大分トリニータでの成功体験を、3部からプレミアに這いあがろうとする現在のバーミンガムに重ねている。

岩田:セルティック行ってスタメンで出られない悔しさがある中で、選手として出場機会を求めたのが移籍の大きな理由です。そのなかでバーミンガムが凄く熱心に声をかけてくれた。自分のキャリアのスタートがJ3だったので、チームのプレミアに戻りたいという熱と自分の這い上がっていきたいというモチベーションが一致しました。3部だろうが関係なく決めました。

2022年末、横浜FMで指導を受けたアンジェ・ポステコグルー氏(現トッテナム・ホットスパー監督)に導かれるようにスコットランド1部強豪のセルティックに移籍。古橋亨梧(現スタッド・レンヌ)をはじめ、旗手怜央や前田大然ら日本代表級の選手と共に在籍したが、岩田は不動のキャプテンであるカラム・マクレガーの後塵を拝していた。出場機会はマクレガーとの途中交代か、DFとしての出場に限られ、ボランチとしては控えの立場だった。

2023/24年シーズン終了後、バーミンガムは監督未経験のクリス・デイビス氏を監督に任命する。デイビス監督は、2016年に当時ブレンダン・ロジャーズ監督(現セルティック)が指揮するセルティックのアシスタントマネジャーとして、また2023年にはポステコグルー監督率いるトッテナムでアシスタント・ヘッドコーチとして、両指揮官をサポートした経験を持つ。

デイビス監督は岩田の獲得に際して、ロジャーズ監督とポステコグルー監督の両者に同選手の技術や人間性などについて事前に問い合わせていたことも明らかにしている。そのため、移籍する上でバーミンガムの求める選手像と岩田の選手としての特長にミスマッチがなかった点も、岩田にとって移籍する上でのアドバンテージとなったことは明らかだろう。