のちに、この会談をトランプ氏の横暴のように非難していたのがドイツや日本の主要メディアだったが、私の見た限り、最初の40分間のトランプ氏は抑制的だった。
EUの反応と「戦争継続」の意図とは?
この会談の翌日、ロンドンに飛んだゼレンスキー大統領を英国のスターマー首相が温かい抱擁で迎えた。ドイツのメディアがその映像と共に発信したのは、「トランプ氏とは違い、私たちヨーロッパはウクライナを見捨てない」というシグナルであり、判官贔屓のドイツ国民がそれに型通り感動した。「絶対にロシアを勝たせてはならない!」と。
またEUエリートたちも、8ヶ月前にオルバン首相が和平交渉を試みた時と同じく、トランプ大統領のそれを誰も評価しなかった。それどころか彼らは、「この戦争はウクライナの負けだ」というトランプ大統領の言葉も完全に無視し、不機嫌な顔で戦争継続のための新たな支援について話し合い始めた。ただ、どの国も、資金も武器もすでに尽きかけている。
では、EUはなぜ、ウクライナ戦争の終結に足踏みをしているのか?
この戦争が22年2月、ロシアのウクライナ侵攻で始まったわけではなく、そこには、それ以前の複雑な地政学的駆け引きや、レアアースなど鉱物資源を巡る利権争いなどが絡んでいることは確かだろうが、しかし、戦争勃発後の3年間に絞ってその総括をするなら、EUを率いるエリートたちは、この戦争に対する対応を完全に間違った。
鳴り物入りで始まった経済制裁は、ロシアではなくヨーロッパを弱体化したに過ぎなかったし、彼らが長らく主張してきた「侵略者プーチンは和平交渉に応じない」という説は、トランプ大統領の出現であっさりと消えた。これまでウクライナに注ぎ込んだ膨大な援助も、さほど役には立っていない。
それどころか、「ロシア抜きでヨーロッパの平和はあり得ない」と主張するハンガリーのオルバン首相がおそらく正しかったのだ。しかし、EUのエリートたちは、それら全てが間違いであったとは、決して認めたくなかった。