この日本特有のチグハグな状況に対応し得る、最良の制度設計が求められます。

私をはじめ多くの薬剤師や医療関係者、有識者、政治家が、OTC類似薬を保険適用から除外すると同時に、『零売』を拡大するよう求めています。

医薬品「零売」規制の妥当性を問う ― 薬剤師の職能発揮を ― 「OTC 類似薬」議論のポイント ―薬機法改正法案は修正を ― 【医療費を年間4兆円削減できると主張】OTC類似薬を公的医療保険の適用外にする等の社会保険料引き下げ改革案 猪瀬直樹議員

「零売」とは、医療用医薬品のうち「処方箋医薬品以外の医薬品」を薬剤師が販売する仕組みです。薬剤師は購入者から症状や状況を聴取したうえで適切な薬剤を選択し、医薬品の使用歴、聴取内容や薬剤師からの助言なども記録されます。

「処方箋医薬品以外の医薬品」の保険適用除外と同時に零売を拡大することで、医療費の抑制と、医療の質の維持・向上を同時に実現することが可能です。

実際に、零売がどのように運用されているか、私の薬局での状況を後段にて紹介します。今後の議論の一助となることを願います。

ただし、日本医師会・日本薬剤師会・厚生労働省は現在、この零売を禁止するための議論を終え、現在すでに法案提出に至っていることに注目する必要があります。

医師会・薬剤師会にとって、OTC類似薬の保険適用除外は保険収入の減少に繋がりかねません。あらかじめ、保険適用除外の受け皿となる零売を法律で禁止し、対象薬の目安となり得る「処方箋医薬品以外の医薬品」の区分ごとなくしてしまえば、OTC類似薬の保険適用除外の議論も進みづらくなるだろう、との思惑と見られています。

このような動きは、利益団体としては仕方ないのかもしれませんが、社会保険料の高騰・若者や現役世代の苦境を考えれば、到底同意できるものではありません。高額療養費制度の上限引き上げ案が多くの批判を浴びたのと同様、従来の利益誘導政治では医療制度が限界に来ていることを受け止める必要があります。