第三回 億兆心を一にして世々厥の美を済(な)せるは、これ我が国体の精華にして、教育の淵源、亦実に此に存す。

「国体の精華と神社」:忠孝を完うし精華を発揮した人を神社に祀る。ゆえに国民たる者は神社に尊敬を払わねばならない。藤原鎌足は談山神社、和気清麻呂は護王神社、楠木正成は湊川神社、そして近代において精華を発揮した人々は靖国神社に夫々祀られている。

「勤王家」:幕末に起こった勤王家は王政維新の機運を導き、七百年間の皇威の衰頽を挽回した。水戸光圀がそうした勤王論の源泉である。

第四回 爾臣民、父母に孝に、

「孝は百行の基なり」:人が万物の霊長であるのは、他の生き物と異なり、親に孝道を尽くすからである。

「孝経と孝道」:孝道は孔子が弟子に作らせた『孝経』に遺憾なく説明されている。歴代天皇はこれを重んじた。孝道は儒教に負うところ大だが、漢書渡来以前から日本国民は孝道を実行していた。吉田松陰は処刑に臨んで、己が親を思ふよりも、親の己を思ふの切なるを歌っている。

「孝導と境遇」:孝は境遇により方法を異にする。中流以下の民は親を養うことを第一義とし(養体)、上流の人は父母の精神を安んずるを第一義とする(養心)。その方法に差はあるが、愛敬の心を以て親に仕えることに違いはない。愛敬の心こそ孝道の中心である。

「平時と緩急における孝」:緩急よりも、むしろ平時における孝道の方が実は至難である。「中江藤樹」は平時における、また「日本武尊」「楠正行」は緩急における孝の模範である。

第五回 兄弟に友に、夫婦相和し、

「兄弟間の友愛」:兄弟姉妹は父母から見れば同じ吾子であるから、兄は弟を愛し、弟は兄を敬して、父母の分身として協同一致して事に当り、父母の心を安んじて、孝悌の道を完うすべし。

「友愛と長幼の序」:長幼の秩序を認めるところが、人が万物の霊長である所以である。

「友愛と境遇」:友愛も環境に応じて異なる。天皇の兄弟関係は国民のそれと大いに異なる。兄弟姉妹の間柄とはいえ、国君なる御兄上に対して弟は君臣の礼を以て仕へざるべからず。