こうした調査において、興味深いのは地域ごとの宗教や婚姻制度の違いです。
特にベルギーはカトリック色が強く、オランダはプロテスタントが主流ですが、両国間で明確な差が見られるわけではありませんでした。
むしろ、同じ国や同じ時代であっても「都会か農村か」「どの所得層に属するか」で大きなばらつきが出るという結果は、人間の性的行動や社会構造の複雑さを改めて実感させるものです。
こうして、婚姻内の父子関係を精密に辿るこのユニークな分析手法によって、「托卵率は一律に高いわけではないが、都市化や生活条件の変化によって上昇することがある」という事実が明らかになりました。
托卵の真相が示す人間社会の本質

今回の調査から浮かび上がるのは、人間における「托卵」が一律に高いわけではなく、その頻度が社会経済的背景や居住環境によって大きく変動するという点です。
平均的には1~2%ほどと非常に低いものの、都市部でかつ低所得層となると5~6%ほどに上昇するケースが存在し、社会的な文脈によって行動様式が変わることを示唆しています。
(※既存の研究では托卵率が50%を超える種ではオスは自分の子供に投資しなくなるとされています)
なぜ都市の低所得層ほど托卵率が高まるのかについては、人口密度が高い地域ほど出会いの機会が増すことや、居住環境の匿名性により隠しやすいことなど、いくつもの要因が考えられます。
また、経済的に厳しい立場であれば、パートナー以外の男性から追加的な資源やサポートを得たいと考える心理が働くことも否定できません。
逆に、ある程度の富や社会的地位がある夫は「相続財産を守りたい」という強い動機から、配偶者の不倫を未然に防ぐ行動を取るため、托卵が起こりにくいとの見方もあります。
さらに宗教背景よりも、人が暮らす環境や家庭の経済力によって差が生じるという結果からは、文化的・宗教的な規範を超えた根源的な「利害関係」や「機会の多さ」が影響している様子がうかがえます。