古代中国から語り継がれる毒殺用の猛毒があります。その名前は鴆(ちん)毒。
古代から現代に至るまで「鴆」が鳥だということしかわからないままの伝説になっていました。毒は羽に含まれ、その羽を1枚、酒の中に入れるだけで猛毒の酒を作り出し、飲んだ人はその場で苦しんで死ぬというものです。
羽に毒のある鳥。しかし鴆を見たことのある人はなく、次第に「羽に毒のある鳥なんているわけないじゃん」となっていきました。
以来、その毒鳥「鴆」と鴆毒は伝説として語り継がれはしたものの、鴆毒=猛毒という意味で使われるようになりました。
それが1990年になって、羽に猛毒を持つ鳥が見つかったのです。
目次
- 古代中国の毒殺用の猛毒、鴆毒は毒鳥の羽で作られる
- 中国4000年の歴史もびっくりな大発見
古代中国の毒殺用の猛毒、鴆毒は毒鳥の羽で作られる
その鳥が最初に発見されたのは1830年。ニューギニアで見つかりました。その時は知られていない鳥が見つかっただけで、毒があるとはわかりませんでした。
この鳥の名はズグロモリモズ。「ピットフーイ」と聞こえる二音節に近い鳴き声から、Pitohui属(モリモズ属)と名付けられました。美味しくないため先住民は食べない鳥だそうです。
それから160年後の1990年のこと、シカゴ大学でズグロモリモズの標本を触っていたダンバッチャー博士の両手に痺れが起き、皮膚に火傷の症状が見られたため調査した結果、触っていた標本の鳥が「羽に毒を持っている」という、とんでもないことがわかりました。

初めて発見された毒鳥。博士は『サイエンス』誌(1992年10月30日号)で報告。その号の表紙はズグロモリモズと、ズグロモリモズに擬態した鳥のイラストで飾られたのです。
これは驚くべき発表でしたが、当時、インターネットで「羽に毒を持つ鳥が見つかる」と小さなニュースになり、鳥や生物が好きな人、毒に興味を持っている人には刺さりました。