このように、歳出削減額が限定的でも、DOGEは既に労働市場の方に影響を与え始めているようである。
早速、コロンビア特別区の新規失業保険申請が増え始めたのを視認できるようになり、「ワシントンDCリセッション」と呼ばれるようになった。もっともその数はせいぜい2千人程度であり、新規失業保険申請件数というデータ全体に与えたインパクトは限定的であったし、地域的にもワシントンDCに集中する公務員の失業が全国の堅調な雇用情勢を一発で変えられるとも思われなかった。現に次の週のイニシャル・クレームは減少に転じた。
このように、いかに大規模な連邦職員の解雇とは言ってもそれがいつ労働市場のデータに現れ始めるかは予想しづらく、金融市場がそれを材料視するのは簡単ではない。
連邦職員の解雇は労働市場にどのような形や規模の緩みをもたらし、様々な雇用系指標にそれはどう出て来るだろうか。
最初に大規模な人員削減が観測されたのは、3/6に発表されたチャレンジャー人員削減数である。本ブログはチャレンジャー人員削減数(Challenger Job Cuts)を最先行指標と扱ってきた。2月中の解雇数は3月初旬には発表される。
2月の人員削減数はそれまでの毎月5万人程度のペースだったのが、17.2万人まで膨れ上がった。うち連邦政府によるものが6.2万人を占めた。新規失業保険申請件数(Initial Jobless Claims)はチャレンジャー人員削減に遅行する。
民間部門の解雇の背景についてチャレンジャー・グレイ・クリスマス社は「DOGEが主導する解雇に加え政府契約の破棄、貿易戦争への警戒」を挙げている。より長期的には、解雇された公務員は民間部門の労働市場にも流入し、民間部門の求職者と競合するだろう。
新規失業保険申請件数は週次であり速報性が高いと思われているが、チャレンジャー人員削減数の遅行指標である。失業保険をすぐに申請する従業員もいれば、休暇を決め込んで申請が遅くなるケースもあり、解雇の影響は徐々に現れると思われるためである。