ところがADHDの人では、こうした時間感覚が抜け落ちてしまって、経過した時間や進行中のタスクにかかっている時間が分からなくなるのです。

具体的な例を挙げてみます。

最も大きな特徴は、時間の感覚を見失うことです。

例えば「お昼はいつ食べました?」とか「最後に旅行に行ったのはいつですか?」といった質問を受けると、それらの出来事がどれくらい前だったかが分からず、上手く答えられません。

また時間経過を体感で測ることも困難です。

9時30分に時計を確認し「30分だけ読書しよう」と本を読み始めて、「そろそろ時間かな」と思って時計を見ると12時を回っているということが頻繁にあります。

時間盲がADHDに見られる不注意や物忘れに繋がっている
時間盲がADHDに見られる不注意や物忘れに繋がっている / Credit:canva

米マサチューセッツ総合病院(MGH)のスティーヴン・ガンズ(Steven Gans)氏によると、ADHDの人は「時間を意図的に無視しているのではなく、感覚的に忘れてしまう」点で共通しているといいます。

言い換えれば、あるタスクを始めると、それに集中したり夢中になりすぎるあまり、「何分くらい経ったか」という時間の意識がすっぽり抜け落ちてしまうのです。

そしてこうした時間盲が、ADHDの主症状として見られる不注意によるミスや物忘れを引き起こしていると考えられます。

では、どうしてADHDでは時間の感覚が失われてしまうのでしょうか?

ADHDで「時間盲」が起こる2つの原因

近年の研究で、ADHDの原因には前頭葉(※)の働きが生まれつき弱いこと、あるいは何らかの機能的な障害が起きることが関わっていると指摘されています。

(※ 注意・思考・感情のコントロールを司ったり、物事を整理・処理・実行する機能を担っている脳領域のこと)

そうした脳の問題が、次の2つの機能障害を起こすことで時間盲を誘発しているのではないかと考えられています。

1つは実行機能の障害です。