・境界性パーソナリティ障害(borderline personality disorder)
対人関係、自己像、感情などの不安定および著しい衝動性を特徴とします。見捨てられることに対して敏感で、そうなるのをなりふりかまわず避けようとします。他者を過剰に理想化したかと思うと同じ人物をこき下ろすという具合に、その対人関係は極端で不安定です。
強調は引用者
平成から令和にかけて、やはり個人でなく社会の「構造」の全体が、このBPDに似てきつつある。
対人関係を可視化するSNSの普及によって、「フォロワーが減った」「いいねが少ない」ことに敏感になる人が増えた。だから世間の話題にはいっちょ噛みでも食いつき、かつ「主流」の論調に乗らないと安心できない。
なにより検索技術がヤバい。中居くんの印象がよかった間は、「中居くん いい人」でサーチすれば人の好い彼のイメージが(いまも)浮かび上がる。だけど不祥事が報じられた後で、ネガティブな用語と一緒に検索するなら、彼をどんどん嫌いになるような情報ばかり集まってくる。
「境界性ソーシャビリティ障害」みたいな、いまの社会のおかしさに特効薬はない。睡眠薬を飲むと誰でも眠くなるようには、飲んだ瞬間にみるみる治る精神病薬が存在しないのと同じだ。
大切なのは問題の所在に気づき、少なくとも症状を「悪化」させないよう気を配ることだ。前にも書いたけど、「病んでいるという自己認識を持つときに、あらゆる病は治癒への一歩を踏み出す」。まさにいまが、その第一歩が必要なときである。