2011年、10歳の若さでスペインに渡り年代別チームで活躍していたが、2015年にバルセロナがFIFA(国際サッカー連盟)から18歳未満の外国人選手獲得および登録違反による制裁措置を受けたあおりで久保の公式戦出場が不可能に。「日本に帰国するよりも、ここで練習していた方が成長できる」というバルセロナ幹部の言葉にも反発し帰国を決意した久保は、プレー機会を求めてFC東京U-15むさしに入団。2段飛び級でトップチームに登録された。

しかし久保は、当時J3に所属していたFC東京U-23を主戦場としていた現状を良しとせず、トップチームの試合で自身を起用しようとしない長谷川健太監督(現名古屋グランパス)の慰留も突っぱね、横浜F・マリノスへ期限付き移籍(2018)する。アンジェ・ポステコグルー監督(現トッテナム・ホットスパー)は彼を重用し、J1初ゴールも決め(2018シーズン第24節ヴィッセル神戸戦)、たった4か月の所属だったにも関わらず強烈なインパクトを残した。

2019シーズン、FC東京に復帰して開幕スタメンに名を連ね一皮むけた姿を見せると、同年6月、移籍金200万ユーロでレアル・マドリードへ完全移籍した久保。しかし世界一のビッグクラブでは当然出場機会もなく、マジョルカ(2019-2020、2021-2022)、ビジャレアル(2020)、ヘタフェ(2021)へとレンタル移籍を繰り返して実戦経験を積み、2022シーズン、レアル・ソシエダへの完全移籍を果たした。その後の活躍は今さら記すまでもないだろう。

10代であっても、監督との相性が合わないとあれば、出場機会を得られるチームへの移籍にも迷いがないその姿には“プロ魂”を感じさせ、現在、若くして海を渡る若手選手の道標となっている。


中井卓大 写真:Getty Images

中井卓大の記録

最後に挙げるのは、「ピピ」の愛称で知られ、レアル・マドリードの下部組織で育ち将来を嘱望されていたMF中井卓大だ。10歳でセレクションに合格し、スペインの地を踏んだ中井。ここまでは久保と同じ足跡で、カンテラ(下部組織)では17歳のフベニールBからの飛び級で、19歳以下のフベニールAでプレーし、すぐさま3部所属のレアル・マドリード・カスティージャでプレーするなど、久保を超える順風満帆なキャリアを歩んでいるように見えた。