・1962年通商拡大法第232条に基づく追加関税 根拠:特定の製品の輸入によって米国の安全保障を損なう 上限:なし 判断者:商務省(DOC) 品目:鉄鋼製品(25%)、アルミニウム製品(10%) (中国に限らず全ての国が対象となった)

・1974年通商法第301条に基づく追加関税 根拠:外国の通商行為、政策及び慣行が貿易協定の規定に違反 判断者:米国通商代表部(USTR) 上限:なし、継続要請がなければ4年間 品目:1万件を超える品目(7.5%~25%の追加関税)

第二次トランプ政権とIEEPA

それに対して、第二次トランプ政権で矢継ぎ早に打ち出された関税・追加関税は、調査期間を必要とするこれらの関税スキームではなく、IEEPA(国際緊急経済権限法, International Emergency Economic Powers Act)を根拠とする。

1977年に制定されたIEEPAは大統領に対し、国家非常事態を宣言した際に、「国家の安全保障、外交政策、または経済に対して、米国外にその全体または大部分の原因を持つ異常かつ特異な脅威」に対処するために、幅広い経済的措置を講じる権限を与える。

歴代の大統領は伝統的にIEEPAを経済制裁や輸出規制に頻繁に利用してきた。それを広範な関税賦課の根拠にも使えると主張してきたのは第一次トランプ政権でUSTR代表を務めたライトハイザーであった。中国との貿易戦争で米国側の代表として強硬な交渉姿勢を見せたことで有名なライトハイザーは第二次トランプ政権で閣僚入りしなかったが、その思想は生きたのである。

とはいえライトハイザーが述べた「米国の貿易赤字とその米国経済への影響の巨大さが脅威である」という理屈はさすがに通用しなかったようで、結局第二次トランプ政権は「不法移民と、フェンタニルをはじめとする致死性ドラッグの流入」という脅威をIEEPA適用の根拠にした。