①アメリカの原点であるプロテスタント系の白人ということの重要性を「神がかった」形で強く信じ(キリスト教・神の重視)、②地域や企業や個人を大切にして大嫌いな連邦政府による統制・規制を極端に排し、③世界に関与することよりも国内を重視して相互不干渉を貫く、ということこそが、トランプ氏が信じるアメリカの「本性」であるとも言える。
4. 今後、日本はトランプ劇場でどう振る舞うべきか
本来は、こうしたトランプ氏のアメリカ、トランプ劇場とも言うべき世界にどう日本は対処するかについてもそれなりに言及したかったが、5000字を越えて紙幅が尽きた。そろそろ筆をおこうと思うが、一言だけ述べるならば、重要な点は、日本はそのタフさと窮状をうまく使い分けつつ、トランプ政権とうまく向き合って行かなければならない、ということだ。
野球で例えれば1回の攻防に過ぎないが初回の日米首脳会談は、無難にうまく終了させることが出来た。ただし、これは、官僚たち(主に日本の外務官僚と米国国務省の官僚)の綿密な準備の成功とも言うべきもので、石破氏やトランプ氏の個性が発揮されてのものではない。恐らく我が国の首相が石破氏ならずとも、このレベルまでの成功という意味では、同じような結果になったであろう。USスチール買収問題にしても、関税問題にしても、これからが山場である。
これまで、日本はアメリカの良心に訴えかけ、そこから滲み出てくる理性に訴えかけ、アメリカの凶暴性を押さえるべくマルチラテラリズム(多国間での枠組み)をベースに活動をしてきた。
上述したとおり、トランプ政権には、そのアプローチは全く通用しない。WTOにしても、国際課税の枠組みにしても、マルチの枠組みに米国を取り込もうとしても、今のアメリカ、トランプのアメリカには次代を共に作る理想主義的気分はなく、感情を損ねれば「じゃあ、脱退する」となるだけだ。
今のアメリカに対して、単にお願いに行くと「では、何をしてくれるの?」という負のディールになり(例えば関税を下げてくれ、という懇願に行くと、見返りを求められてしまう)、強気にマルチの枠組みで封じ込めに行こうとすると(これが国際ルールだよね、と説得しようとしても)、脱退されるなどして終わってしまう。