①国家主体ではなく、民間や地方政府主体であるのが、トランプ氏にとっての約束の地とも言えるアメリカの「本性」である。まさに、United States of America(合衆国・合州国)であり、アメリカの本質は、各地・各企業・各個人にある、という考え方だ。独立当時で考えるとジェファソン的なアンチ・フェデラリスト的伝統と言っても良いかもしれない。
そう考えると、例えば、現下のトランプ政権が推し進めている連邦政府の予算を大幅に削って、それを国民に還元するという発想や、或いは、テクノ・リバタリアンたちを重用して規制を嫌い、経済人たちの自由競争を促すというスタンスは更に容易に理解できる。
②世界の警察官となって各地を押さえに行くのではなく、相互不干渉的に、他国の内政にも干渉せず、こちらにも干渉してもらいたくない、というのがアメリカの「本性」である。歴史的には、モンロー主義を掲げたり、国際連盟を提唱しつつ議会が批准せずに加盟できなかったりしたという過去、第二次大戦後の貿易秩序維持のためのITO設立が幻に終わったという過去などもあるが、アメリカの本来のスタンスは、世界への不関与にあるという考え方だ。
そう考えると、現下のトランプ政権が進める「撤退」戦略、つまりは各国に防衛を委ねていくということは、容易に理解できる。
いわゆるMAGA、Make America Great Againを聞いてピンときた人たちも多いと思うが、共和党候補としての大統領選への出馬を目指したブキャナン候補の1992年のキャンペーンでは、Make America First Again(MAFA)というキャッチコピーが使われている。
民主・共和の両党ではない第三の候補として旋風をおこしたロス・ペロー氏などもこの系譜だと思うが、トランプ氏のように極端に中心に入って来たのは異例としても、今にはじまったものではなく、実は伝統的にアメリカにある系譜を継いでいるのがトランプ氏とも言える。