参加者は日用品や飲み物などのペアを提示され、どちらを選ぶかを判断した後、アナグラム(文字並べ替えパズル)を解くタスクに取り組みました。

ここで注目したのは、どれだけ粘り強くパズルを解き続けるかという「持続力」の差でございます。

その結果、「より幸せになる選択」を意識したグループは早くギブアップする傾向がみられ、幸福を追求している最中に意志力が消耗されることが明確に示唆されました。

総じて4つの実験は、幸せを求める行為が自己コントロールを疲弊させるという一貫したパターンを示しております。

幸せの追求そのものが心理的レバレッジを奪い、日々の意思決定や誘惑への抵抗力を弱めることが、まさに「幸せを願うリスク」の核心であるといえます。

この結果は、幸せになろうと努力することや何らかの幸せに暴露させられることが、人間の意思力を急激に消耗させ、自己コントロール能力を奪っていることを示しています。

「もっとポジティブな気分にならなければならない」「これくらいでは満足してはいけない」と意識的に自分を変えようとするほど、そのためのエネルギーを消耗し、結果として自制心や集中力を失いやすくなります。

そしてその結果として、幸せを実現させるのとは正反対な行為や習慣に引きずられてしまい、不幸に陥るのです。

幸せな人と比較して不幸を感じる場合は基本的に、相対的な不幸であり絶対的な没落とは異なります。

しかし意志力を消耗して誘惑に負けたり無意味な行為に没頭するのは直接的に不幸を呼び込む行為です。

他人と比べて収入が少ないことに不幸を感じるより、幸せを目指す過程で意思力を失い、仕事に行かなくなり失職するほうが、より直接的かつ絶対的な不幸です。

そういう意味では「幸せを目指して不幸になってしまう本当の原因」は、他人との比較ではなく、意思力の消耗による没落と言えるでしょう。

幸せになりたい人は「幸せそのもの」を目指してはいけない

幸せになりたい人は「幸せそのもの」を目指してはいけない
幸せになりたい人は「幸せそのもの」を目指してはいけない / Credit:Canva