しかし田舎にも頸部リンパ節結核を患っている患者はごまんといます。

そこである突飛な方法でのロイヤルタッチが行われたのです。

それは17世紀後半、スコットランドのアナンデール地域でのこと。

そこに患部を舐めることで頸部リンパ節結核を治してしまう「馬」がいると話題になったのです。

スコットランドの活動家であったアレキサンダー・シールズは日記にこう記しています。

「目撃した人から聞いたのだが、アナンデールの麓(ふもと)かどこかに特別な馬がいて、その馬が患部を舐めると王の病が治ってしまうそうだ。

その馬にあやかろうとして、方々から人々がやってくるとのことだ」

これはおそらく、僻地(へきち)に住んでいてロンドンまで行けない農民たちが苦肉の策として考えついたロイヤルタッチの代案だったと思われます。

しかし、遠方まで行くお金もない病人たちにとっては、この馬は心強い存在だったでしょう。

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ロイヤルタッチをするフランソワ1世の絵/ Credit: en.wikipedia

またフランスでも風変わりなロイヤルタッチの慣習が生まれていました。

現役の王様は職務のために忙しかったり、ロイヤルタッチの儀式もそんなに頻繁にはしないため、受けたいときに受けることが困難でした。

そこでフランス人たちは「生きた王がダメなら、死んだ王でもいけるんじゃないか?」と考えたのです。

彼らは亡き王の体に触れさえすれば、その神秘的な力で病を癒してくれると主張し始めました。

ロイヤルタッチの対象に選ばれたのは、ルイ9世(1214〜1270)の亡骸です。

ルイ9世は亡くなった後にカトリック教会から聖人とされた王であり、それゆえに神秘的な力が宿っていると信じられました。

そうしてルイ9世の亡骸が聖遺物として収められている礼拝堂にヨーロッパ中から人々が押し寄せて、白骨化した腕に触れるようになったのです。

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ルイ9世/ Credit: ja.wikipedia