彼らは共に、神から授かった国王の癒しの力を示すためにロイヤルタッチを始めました。
ロイヤルタッチを行うときは必ず、大衆を集めてその面前でするのが決まりです。
その手順はおおよそ次の通りでした。
まず、宴会場の王座に座っている王の元へ、病人が運ばれてきます。
病人は王の前でひざまずき、王に顔や頬を一度だけ触れられます。
すると側に控えている司祭が「陛下のお力で病人の病は癒やされた」といった紋切り型の言葉を述べて終了です。
これを順繰りに何人もの病人に行いました。

他に治療手段もない中世において、ロイヤルタッチは非常な人気を博しました。
また市民たちに人気だったのには、もう一つ理由があります。
それは聖ミカエル像が彫られた特別な金貨がもらえたことです。
この慣習が始まったのは15世紀の半ば頃ですが、ロイヤルタッチを受けた市民や農民たちは、帰り際にこの金貨をもらうことができました。
金貨には聖なる力が宿っていると信じられていたため、彼らはそれを首からぶら下げて、病気で苦しいときは金貨を患部に擦り付けたりしたのです。
無料の触手療法に加えて金貨までもらえるのですから、中世の人々がロイヤルタッチを求めてやまなかったのも当然でしょう。
加えて、農奴制が深く根付いた社会にあって、多くの人々は教育を受ける機会もなかったため、王の神秘的な力を盲信して強力なプラセボ効果が起きたと考えられます。
そう考えると、ロイヤルタッチも決して意味のない治療ではなかったのかもしれません。
「病は気から」というように、強く信じ込むことで本当に病気が治ってしまうケースも往々にしてあるからです。
こうしてロイヤルタッチにより救われた人も少なくありませんでしたが、実は国王たちにはロイヤルタッチを行う裏の目的があったのです。