さらに、パラダイム論で有名なトーマス・クーンの視点を取り入れると、別々の理論や方法論が、ある次元では重ならないパラダイム同士でも、ふとしたきっかけで共有する“接点”が見いだされることがあります。

重力あり・なしというまったく異質な理論空間が、実は大きなメタ理論や高次元の枠組みではつながっているかもしれない――そうした直感を、二重性の発見は後押ししているのです。

つまり、これらの理論は完全に独立したパラダイム同士ではなく、もっと上位のレベルで一本化できるヒントが潜んでいる可能性があります。

このように、 “表面上の違いが大きい理論ほど、深層構造の一致が見つかったときのインパクトは絶大”と考えられます。

たとえば 今回の素粒子同士の衝突で見られる対蹠双対性のように、「全然違う性質を担うはずの粒子や時空が、なぜか数式レベルで結びつく」といった事実が明らかになると、「私たちの住む宇宙は思ったよりもシンプルで統一的なのかもしれない」という期待を抱かせるからです。

構造実在論的にいえば、それは“世界の本質的構造”がちらりと見えた瞬間ということになりますし、道具主義的にいえば「面白い対応だけれど、あくまで計算がうまくいくだけかもしれない」とも言えます。

いずれにせよ、こうした二重性や統一的視点の発見は、私たちが「自然は複雑そうに見えて、実は背後に大きな統一性を潜ませているのではないか」という新たな世界観をちらっと垣間見るきっかけとなるでしょう。

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元論文

New relations for gauge-theory amplitudes
https://doi.org/10.1103/PhysRevD.78.085011?_gl=1*zztaz5*_ga*NDc0MDg5NTkwLjE3MjAzOTI3NTM.*_ga_ZS5V2B2DR1*MTc0MTAwNjAwMC44Ni4wLjE3NDEwMDYwMDAuMC4wLjE1NzM0NjM0ODI.