また、2016年のUCLによる研究では、命令に従った際の脳の反応が「受動的な行動」として処理されることが示唆されました。

つまり、人は強制された状況下では、自分の行動に対する主体感を低下させ、責任を感じにくくなるのです。

この知見は、歴史的な戦争犯罪や企業不祥事においても、「上司の命令だから」という弁解が頻繁に用いられる背景の一つと考えられます。

命令を受けると、脳が行動の責任を「他者に委ねた」と認識することで、服従が容易になる可能性があるのです。

この研究結果は、私たちの行動がいかに社会的な影響を受けやすいかを示しています。

「私はそんなことをしない」と思っていても、権威の命令のもとでは、意識しないうちに服従してしまう可能性があるのです。

では、私たちはどうすれば「命令」に流されず、自分の倫理観に基づいて行動できるのでしょうか?

心理学の研究では、特定の性格特性を持つ人は特に服従しやすいことが示されています。

例えば、他者との調和を重視し対立を避ける傾向が強い人は、権威者の命令に逆らいにくいと言われています。

また、「自分の人生は外部の力によって決められている」と考える人は、命令を受けた際に「自分には決定権がない」と感じやすくなります。

さらに、権威を強く信じる傾向がある人や、上下関係を重視する人も、命令に対して疑問を抱かずに従いやすいことが指摘されています。

こうした人は、命令の妥当性を考えずに服従するリスクがあるため、異なる意見を持つ人と対話し、批判的な視点を育んだり、一度立ち止まり「これは本当に自分が望んでいる行動なのか?」と自問する習慣をつけるとよいでしょう。

今回の研究結果は、「誰でも状況次第で服従してしまう可能性がある」ことを示しています。

しかし、それと同時に、服従のメカニズムを理解し、自分の性格や行動パターンを意識することで、盲目的な服従を防ぐことも可能であると考えられます。