ただ生徒役は実際には電気ショックを受けておらず、あたかも苦痛を感じているかのように叫び声をあげる演技をしていただけです。
被験者は当然この事実を知りません。そのため本気で苦しむ生徒の様子を見ている状況でしたが、それでも実験を進めるよう命じられると、多くの被験者が指示に従いました。
そして最終的に被験者の65%が最大450ボルトの電気ショックを与えるまで命令に従い、生徒役が気絶する演技をするまで実験を続けました。
この結果は、普通の人でも権威の命令に従い、他者に平気で害を及ぼしてしまうことを示しています。
かなり過激な実験ですが、これは50年以上前のものです。では、現代の我々にも同じ傾向は見られるのでしょうか?
現代で行われたミルグラム実験の再検証
ミルグラム実験が行われたのは1960年代ですが、近年になってもこのテーマに関する新たな研究が行われています。
ポーランドのSWPS大学の研究チームは、ミルグラムのオリジナル実験の枠組みを再現し、現代の人々がどの程度服従するのかを検証しました。
この実験が行われた背景には、現代社会において権威への服従傾向がどの程度変化しているのかを明らかにする目的がありました。
特にポーランドは戦後、共産主義体制の影響を受け、歴史的に権威への従順傾向が強かったため、現在の世代がこの傾向を引き継いでいるかどうか検討することに興味が向けられたのです。
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実験では、被験者が「教師」役として「生徒」に記憶課題を行わせ、間違えるたびに電気ショックを与えるよう指示されました。
最初の10回までは電気ショックボタンを押すよう求められましたが、その後の進行については被験者自身が判断できる仕組みになっていました。
結果として、90%の被験者が最大ボルトの電気ショックを実行しました。