これは、1960年代のミルグラム実験の結果とほぼ同じでした。

ただ、被験者が女性の場合、「生徒」役が女性だと、服従率が若干低下する傾向が見られたようです。

他者の命令に服従する脳のメカニズム

一方、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームは、命令に従った際の脳活動を調査し、人がどのように行動の主体感を失い、責任感が低下するのかを解析しました。

実験では、被験者が二つの状況に置かれました。一つは「自由選択」条件で、自分の判断で電気ショックを与えるもの。もう一つは「命令」条件で、実験者から指示を受けて電気ショックを与えるものです。

この際、被験者の脳活動を測定し、行動の主体感がどのように変化するのかを調べました。主体感とは、「自分が自らの行動を制御し、その結果を生み出している」という感覚のことを指します。

実験の結果、命令を受けて行動した場合、被験者は「自分が行動した」と感じる度合いが低くなり、脳が「自発的な行動」として処理していないことがわかりました。

このとき、脳の前頭前野や運動関連領域の活動が低下し、行動と結果の結びつきが曖昧になることで、「自分が引き起こした」という感覚が薄れていたのです。

この結果、被験者は「自分が行動を決定した」と感じにくくなり、行動の責任を「自分ではなく、命令を下した人のもの」と認識する傾向が強まることが示唆されました。

つまり、命令に従うことで、自分の行動の責任を感じにくくなり、結果として罪悪感や倫理的な抵抗が低下する可能性があるのです。

本文3:実験結果が示す服従のメカニズム

ポーランドの研究では、半世紀以上が経過してもなお、人々が権威の命令に従いやすいことが確認されました。

驚くべきことに、実験に参加した被験者の90%が、最大電圧の電気ショックを与えるよう指示された際に従ったのです。

これは、過去のミルグラム実験とほぼ同じ結果であり、現代においても人間の服従傾向は根強く残っていることを示しています。