世界的な日本食ブームと天然資源の枯渇

 クロマグロの養殖が盛んなのは、スペイン、トルコ、クロアチア、イタリア、マルタなど地中海沿岸諸国とメキシコで、その多くは日本に輸出されていた。寿司ネタとしてはもちろん、伝統的な日本人のマグロ好きが理由だ。しかし、最近は状況が変わっている。

「海外ではもともと、それほどマグロは人気ではなかった。日本に来ておいしいということを知ってしまった。今は中国とかに国際市場で買い負けている」(岡田センター長)

 寿司用マグロの中では最上級とされるクロマグロだが、世界中で獲りすぎたため、数が減少して大きな問題になった。漁獲規制も強まった。天然の数を減らさず食べ続けるためにも完全養殖が必須だ。

「天然資源は漁獲規制をしたからすぐに回復とは考えにくいし、餌になる魚や環境によって豊漁・不漁もある。今はたまたま豊漁になっているだけで、いずれまた天然稚魚が取れないサイクルに入るかもしれない。それはいつ起こるかわからない。そういうときに備えて今のうちに完全養殖技術を確立しておこうと考えている」(岡田センター長)