マグロは天然ものと養殖が競合関係になるのか
野菜や家畜は基本的にすべて栽培されたり飼育されたりしたもので、魚で言えば「養殖」ということになるが、水産物は天然と養殖が市場で競合する場合が多い。この市場構造が完全養殖マグロの事業縮小につながっている。すなわち、今は天然マグロが一時的に資源回復しており、それが養殖業には逆風となっている。25年は日本近海の漁獲枠が5割拡大するという。24年の豊洲市場(東京)の「まぐろ(国内)」の平均卸値は1kgあたり3879円で、前年比6%下がっている。
「過去には他の養殖魚も天然ものと競合していた時代があった。しかし、真鯛やシマアジも今は天然ものより飼育しやすいとか成長が速いとか、そういうところまで技術が進んだ。養殖魚は天然ものよりおいしいという評価を漁師さんからもいただいている。クロマグロはそこまで技術が追いついていない」(岡田センター長)
例えば、近年は寿司ネタとして人気のサーモンは、養殖魚でなければ生食用として流通できないことになっており、天然の鮭との価格競合が生じにくい。市場価格も安定している。
「サーモンは完全養殖で品種改良も進んで、水産物の中ではもっとも進んだものといえる」(岡田センター長)