これが例えば親指であれば、日本や欧米各国であれば「サムズアップ」と呼ばれ、良い意味で使用されるが、中東や中央アジア、アフリカなどでは侮辱的な意味を持つ。また、手の甲を表にした「裏ピースサイン」も英国では「死ね」「くたばれ」と受け取られる。これらの例は一部に過ぎず、あらゆるハンドサインの意味や使ってはいけない国を調べ、片っ端から禁止にしていたらキリがないだろう。

取り組むべきは「差別の撲滅」
Jリーグ側や各クラブはそんな些末な事象よりも、より取り組むべきは「差別の撲滅」ではないか。歴史を紐解けば、Jリーグ史上初の無観客試合となった原因も、2014年3月8日のJ1第2節、浦和対サガン鳥栖戦(埼玉スタジアム2002/0-1)で、浦和サポーターがゴール裏スタンド入り口に掲げた「JAPANESE ONLY(日本人以外お断り)」と書かれた差別的な横断幕が原因だった。
Jリーグのみならず、欧州では差別を深刻な問題として受け止められており、日本代表MF鎌田大地(クリスタル・パレス)も被害に遭っている。
さらに、レアル・ソシエダに所属する日本代表MF久保建英は、2月23日のレガネス戦(レアレ・アレーナ/3-0)で後半3分にスーパーゴールを決めた直後の後半16分、ゴール前での競り合いで倒れ込むと、レガネスDFレナト・タピアから何やら言葉を掛けられ激昂。タピアのシャツを掴んで引き倒そうとするなど、これまで見せたことのない怒りを見せた。
それはレガネスGKマルコ・ドミトロビッチが仲裁に入るほどで、興奮冷めやらぬとみたイマノル・アルグアシル監督は、後半20分に久保をベンチに下げた。結果、久保は警告を受け、3月2日に行われるバルセロナ戦は累積警告(通算5枚目)で出場停止となってしまった。
現地ジャーナリストが読唇術を用いて分析したところ、タピアが放った言葉は「maldito chino(クソ中国人)」だったことが判明。人種差別として告発したものの、久保の出場停止処分が覆されることはなかった。