一方、人文科学系の学生では「AIのサポートを受けても成績につながらない」「課題の内容がAI向きではない」と感じる人が多く、AI利用率自体がやや低い傾向にあります。
このように、単純に「全員がAIを使っているわけではない」という事実が、学生間の学習環境や成果に差をもたらす懸念を強めているのです。
今回の調査で顕在化した「デジタル格差」は、今後さらに大きな社会問題へと発展する懸念があります。
有料版のAIサービスや高度な機能を使える環境にアクセスできる学生と、そうでない学生の差は学業成績だけでなく、将来の就職活動やキャリア形成にも影響を及ぼしかねません。
そこで大学や公共機関には、学生全員が同じスタートラインからAIに触れられるよう、サブスクリプション費用の補助や、AIリテラシー講習の充実など具体的なサポート策が求められています。
また、学外でも企業や地域との連携により、AIツールの勉強会やワークショップを開催するなど、幅広い層がAIを活用できる土壌を整備することが重要です。
こうした取り組みが進めば、単なるテクノロジーの“流行”としてではなく、学生一人ひとりの学習体験を深める手段としてAIが定着し得るでしょう。
いまや大学だけでなく、社会全体がこの変化にどう向き合うかが問われているといえます。
知能の陳腐化は起こるのか?
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大学生の学習においては、レポートや課題にAIが積極的に活用されるようになり、AIを使いこなすスキル自体が成績や評価に大きく影響し始めています。
これは従来「知力」や「知識量」とみなされてきた要素が相対的に価値を失いつつあることを示唆しており、一部では「知能(や知識)の陳腐化」が進むのではないかと懸念されています。
このような現象は、過去にも似た事例がありました。
たとえば、暗算や筆算が主流だった時代には、速く正確に計算できる能力が極めて重視されていました。