では、なぜ学生たちはここまでAIに魅力を感じているのでしょうか。

第一に挙げられるのは「時間の節約」です。複数の授業から大量の課題が出される大学生活において、AIツールを使えば下調べや文章作成にかかる時間を大幅に短縮できるというのは大きなメリットです。

また、自分のアイデアや課題内容をすぐに補強したいときにAIを使うことで、短時間で要約・リサーチ・文章校正などをこなせるという利点も見逃せません。

さらに、課題の質を上げるためのヒントや追加情報をAIから得られるため、従来よりも「賢く」「早く」レポートを完成できるという実感を持つ学生も増えているのです。

このように学生のニーズとAIの機能が噛み合った結果、わずか1年で“AIフル活用”の学習スタイルが急拡大しているといえるでしょう。

急増するAI利用を前に、大学側も対応を進めてはいるものの、そのポリシーや指導方針に一貫性がないことが学生から不満として挙げられています。

ある学生は「大学がAIの使用を実質禁止しているように感じるが、実際には明確なルールがなく、禁止とも推奨とも言い切れない」という声を上げています。

また、「AIを使うと学術不正になると言われる一方で、一部の講師は堂々とAIを使っている」といった矛盾したメッセージに戸惑う学生も少なくありません。

さらに、AIを利用して課題をこなしていることを大学側が的確に把握できるのかという疑問もあります。

一部ではAI検出ツールを導入している大学もありますが、誤検知が多いなど精度に課題があり、結果として学生と教員の双方で混乱が生じる場面が増えているのです。

「ほぼ全員がAIを活用する」状態になった今、大学の評価手法はこれまでの常識では通用しなくなりつつあります。

多くの学生がレポートや論文作成に生成AIを取り入れている以上、単純に文章の出来栄えや分量のみを採点するやり方では、どれだけ本人が深く考えたのかを見極めることが難しくなっています。