もし変化があまりに急激で過酷なら、生物がいくら「進化しやすさ」を身につけようとしても間に合わない可能性があるのです。

そうした現実の問題に向き合うにあっても、「進化が自らの進化を促進する」仕組みを理解しておくことは意義深く、例えば害虫や病原体の進化を抑える手段を考えたり、新たな機能や特性を生み出す進化的アルゴリズムをより洗練させたりといった応用も期待できます。

最終的に、この研究は「生物の進化はゴールのない単純な競争ではなく、“伸びしろ”そのものを発達させられる柔軟なプロセスである」という示唆をもたらしているのです。

まさに「進化が進化する」という考え方が、私たちの進化論にも新たな地平を開いていると言えるでしょう。

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元論文

Evolution takes multiple paths to evolvability when facing environmental change
https://doi.org/10.1073/pnas.2413930121

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部