さらに20世紀にはDNAが遺伝情報の実体であるとわかり、分子生物学が進化論と結びつくことで「モダン・シンセシス(現代的総合説)」が確立され、突然変異や遺伝的浮動、遺伝子の流入・流出など、複数の要因が組み合わさる進化の枠組みが整備されてきました。
ところが近年、そうした「どうやって進化するか」だけでなく、「進化そのものがどれくらい起こりやすいか」という“進化可能性(Evolvability)”の重要性が注目を集めています。
実際、ウイルスや細菌が薬剤耐性を獲得するスピードの速さを思い浮かべると、ごくわずかな変化が驚くほど速やかに集団へ広がってしまう現象の背景に、「進化可能性」が深く関わっていると考えられています。
長い進化の歴史の中で、環境が何度も大きく揺らいだり短期間で変わったりした場合、進化というプロセス自体が「将来の変動に備える形」に変化していく可能性が指摘され、まさにそれが「進化が進化する」というテーマの核心となっています。
進化自体が進化するメカニズム
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今回の研究で使われたのは、Avidaと呼ばれるデジタル進化のプラットフォームです。
これは、小さなコンピュータプログラム(“デジタル生物”)が自分自身を複製し、その際にランダムな“突然変異”を起こしながら増えていく仕組みを再現したものです。
たとえばバクテリアが培地の中で繁殖しながら進化していく様子に似ていますが、コンピュータ上では時間を大幅に短縮でき、研究者が環境条件を自由に設定して何万世代にも及ぶ進化を観察できます。
研究チームはこのAvidaを用いて、環境Aと環境Bという対照的な条件を交互に繰り返し与える設定を作りました。
論文では、特定の論理タスクを行うと“報酬”が得られる一方、逆のタスクを行うと“ペナルティ”を受けるといった仕組みを設定していますが、本記事では理解を助ける比喩として「青いベリーが有利な環境A」「赤いベリーが有利な環境B」というイメージを用いて説明しています。