しかし、「幸せな顔」を見たときには、不安のレベルによって脳の反応が男女で正反対の動きを示しました。
- 不安が強い女の子 → 幸せな表情を見たとき、後頭部や側頭部の脳活動が低下。つまり、「ハッピーな雰囲気」をあまり受け取れていない可能性がある。
- 不安が強い男の子 → 逆に、同じ脳領域がより活発に。幸せな表情を強く意識している可能性がある。
つまり、不安が強い子どもたちの中でも、女の子はポジティブな刺激をキャッチしにくく、男の子は逆に敏感に取り入れやすい という特徴が浮かび上がったのです。
(※また、感情の処理に関わる「扁桃体(へんとうたい)」の活動には顕著な差が見られず、これも今後の研究課題になりそうです。)
ではこの脳活動の違いは何を意味するのでしょうか?
不安が高い女の子でポジティブな表情への反応が弱まる現象は、「自分の心配ごとに意識が向きすぎて、周りのうれしそうな雰囲気や表情を十分キャッチできなくなる」可能性を示唆しています。
逆に、不安が高い男の子が幸せな表情を見たときに脳が強く反応するのは、「不安な気持ちを和らげようとポジティブな刺激を積極的に取り入れようとする」働きかもしれません。
- 不安が強い女の子 は、「自分の心配ごとに気を取られすぎて、周囲のポジティブな雰囲気を十分に受け取れない」可能性がある。
- 不安が強い男の子 は、「不安な気持ちを打ち消そうと、ポジティブな表情に敏感に反応している」可能性がある。
つまり、同じ「幸せな顔」を見ても、不安の強さと性別によって脳の感じ方が大きく変わるのです。
また、怒り顔を見たときに顔認識領域が強く反応していたことから、子どもたちは危険や脅威を察知する能力を本能的に持っていることも確認されました。
こうした知見は、教育や日常生活の場面でも応用が期待されます。
たとえば、男の子の場合はポジティブな表情に救いや励ましを見いだしやすいかもしれませんが、女の子ではどれだけ周囲が明るい雰囲気を示しても、それが十分な安心感や元気づけにつながらないこともあるということです。