反物質の生成と課題
反物質は宇宙のどこでも生まれており、実は私たちの体内でも微量ながら発生している。例えば、カリウムを多く含むバナナは1時間に1個の反電子(陽電子)を放出する。しかし、こうした自然発生する反物質はすぐに周囲の物質と接触して消滅してしまうため、研究には不向きだ。
CERNでは、粒子加速器を用いて反物質を人工的に作り出している。陽子を高速で加速し、イリジウムのブロックに衝突させることで、約100万回に1回の確率で、物質と反物質のペアが生まれる。しかし、この方法には莫大なエネルギーが必要であり、CERNの粒子加速器は研究所全体のエネルギー消費量の90%を占める。
さらに、作り出した反物質は通常の物質と接触すると即座に消滅してしまうため、極低温の磁場によって完全な真空状態で保存する必要がある。現時点での反物質の最長保存記録は単一粒子で405日、反原子でわずか17分である。

(画像=画像はUnsplashのBrandon Styleより,『TOCANA』より 引用)