この単純な工夫は、強制ではなく、人々の自然な行動を利用したナッジの典型例とされています。

ナッジはほんの少しの変更で、人々の行動を改善する強力な手法となるのです。

では、他にもナッジをどのように利用されているのでしょうか。

ナッジの活用例

ナッジは、さまざまな分野で実際に活用されています。

健康に役立つナッジ

健康に良い選択肢を増やすことで、人々の行動を改善できます。

例えば、学校や企業の食堂では、健康的な食品を目立つ位置に配置することで、より多くの人が健康的な食事を選ぶようにしています。

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階段に消費カロリーを表記 / Credit:Canva

さらに、階段の利用を促進するために、ステップごとに「消費カロリー」を表示する取り組みもあります。

この方法は、特にオフィスビルや駅構内で広く採用されており、利用者の健康増進に貢献しています。

人々はその表示を見かけるたびに、「最近太ってきたし、健康のためにもエレベーターを使うのではなく、階段を登ろう」と行動を変えるのです。

環境保護に役立つナッジ

エコブランディングの手法では、商品のパッケージに環境負荷の情報を明示することで、消費者がエコ製品を選びやすくする工夫がなされています。

また、ホテルでは「タオルの再利用が環境に良い」と強調する表示をすることで、宿泊者が自然とタオルを再利用するよう誘導します。

これにより、洗濯にかかる水やエネルギーの消費を削減することに成功しています。

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デンマークでもナッジが活用されている / Credit: d-k_Understanding Nudge in 10 minutes(2023)

さらにデンマークでは、2011年以来、街中に設置されたゴミ箱に対して、「ゴミ箱までの足跡を示す」取り組みが導入されています。

この簡単な取り組みにより、ゴミ箱の周囲に落ちているゴミの量は40%も削減されました。

購買意欲を高めるナッジ