もっとも、実用化に向けては、水中環境からの脱却や筋肉への栄養供給方法、さらには長時間駆動時の疲労対策など、まだ多くの課題があります。
そうしたハードルを一つひとつ乗り越えていくことで、“人間の筋肉が動かすロボット”というSFのような未来図が、確かな技術となって私たちの生活を支える日が来るかもしれません。
生物と機械が一体となるバイオハイブリッド技術は、ロボット工学だけでなく、再生医療や神経科学、組織工学など多様な分野を巻き込みながら急速に発展しています。
これから先、脳や神経との直接的な連携や、感覚フィードバックを備えた“感じる”ロボットなど、より先進的な研究も加速することでしょう。
次の10年で、私たちが思い描いている“ロボット”という存在が、まったく新しい姿に変わっている可能性は十分にあります。
人間の筋肉を備えたロボットハイブリッドハンドの誕生は、その第一歩です。
科学の進展により、ロボットと生き物の境界は今まさに溶け合いつつあります。
どんな未来が待っているのか──私たちが目撃するのは、まさに“未知との遭遇”ともいえる新時代のはじまりなのです。
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参考文献
世界最大!筋肉で動くバイオハイブリッドハンド
https://www.waseda.jp/inst/research/news/79678
Biohybrid hand gestures with human muscles
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/en/press/z0508_00386.html
元論文
Biohybrid hand actuated by multiple human muscle tissues
https://doi.org/10.1126/scirobotics.adr5512
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。