アメリカにおけるUSAIDの陰謀論

 USAIDは、その影響力の大きさから数多くの陰謀論の対象となってきた。特に有名なものが下記の5つの説だ。

  1. CIAの隠れ蓑説
     USAIDは表向きは援助機関だが、実際にはCIAと連携してスパイ活動や政権転覆を行っているという説。過去に実際にCIAと協力していた事例もあり、根強く信じられている。
  2. 生物兵器開発説
     2022年、ロシア政府が「USAIDがウクライナで秘密の生物兵器研究をしている」と主張し、陰謀論が拡散した。証拠は確認されていないが、類似の説は以前から存在する。
  3. メディア買収説
     USAIDの資金がニューヨーク・タイムズやポリティコなどのリベラル系メディアに流れ、偏向報道を助長しているという説。トランプの「USAIDがフェイクニュースメディアを支援している」という主張にもつながった。
  4. アメリカの経済支配ツール説
     USAIDの援助は純粋な人道支援ではなく、アメリカ企業が途上国市場を支配するための戦略だとする説。USAIDのプロジェクトでは、アメリカ企業が請負業者になることが多く、最終的に資金が国内に還流しているとの指摘がある。アフリカやアジアでは、USAIDの活動が市場開放とアメリカ企業の進出を容易にするという批判がある。
  5. 人口削減計画説
     USAIDが発展途上国にワクチンや医療支援を提供するのは、人口削減を狙っているという説。1990年代、ナイジェリアやインドでのワクチン接種プログラムに「不妊効果がある成分が含まれていた」という未確認情報が拡散した。一部の陰謀論者は、USAIDとビル・ゲイツ財団が途上国の出生率低下を推進していると考えている。
     これらのようにUSAIDに関する陰謀論の多くは過去に提唱されてきたが、いずれも決定的な証拠は提示されていない。
「USAIDの光と影」閉鎖の背景と広がる陰謀論
(画像=Image by M G from Pixabay,『TOCANA』より 引用)