そこで研究者たちは既存の衝撃波と組織へのダメージを考慮に入れ、人体を破壊するのに十分な衝撃波を発生させられるブラックホールのサイズを計算しました。
するとブラックホールの質量が約1400億トンほどあれば(塵サイズの大きさでも)弾丸並みのエネルギーを人体に伝える衝撃波を発生させると計算されました。
つまり、ショック波だけで致命傷になるにはこれくらいの質量が必要ということです。
潮汐力による破壊
次に研究者たちは、ブラックホールのなんでも吸い込む力として知られる、潮汐力を使った人体破壊方法を調べることにしました。
ブラックホールは巨大な重力を誇ることが知られており、十分大きなブラックホールが突然人体の片側に出現すれば、人体を引き裂くことが可能です。
といっても、近年の医療技術は進んでおり、手足が千切れただけでは致命傷になるとは限りません。
そこで研究者たちはダメージを考慮する器官を脳としました。
脳は人体で最も繊細で重要な器官の一つであり、潮汐力によって重大な損傷を受けると考えられます。
そして研究では「10~100ナノニュートン(nN)」ほどの引き裂き力が加わると細胞が壊れ得ると想定し、必要な潮汐力をうみだせるブラックホールの質量が計算されました。
結果、潮汐力で脳細胞を破壊するにはブラックホールのサイズが7兆トンから70兆トン必要であることが判明。
つまり人体を破壊する場合には、潮汐力よりも衝撃波を用いた方が有効であり、そのために必要なブラックホールの質量は1400億トンとなります。
これまで極小のブラックホールについてはさまざまな研究がなされてきましたが、人を殺傷できるブラックホールの質量が真面目に検証された例は極めて稀と言えるでしょう。
しかし実際問題として、そのような極小のブラックホールが人体に命中することなどあるのでしょうか?
ブラックホールが人間に命中する確率
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