ブラックホールと聞くと、多くの人は「巨大な天体を何もかも呑み込む恐ろしい存在」を想像するでしょう。

しかし実は、宇宙には“ミクロ”サイズのブラックホールが存在する可能性があると考えられています。

それらは「原始ブラックホール(PBH)」と呼ばれ、ビッグバン直後の高密度な状態で形成されたかもしれない天体です。

質量は小惑星級でも、その直径は1マイクロメートル以下。

いわば「ちりほど小さいのに、実は超重い」という不思議な存在候補です。

SF小説家のラリー・ニーヴンは、1970年代に「もし小さなブラックホールを使って殺人を犯すとしたら?」という大胆なストーリーを描きました。

これはあくまで架空の設定ですが、「本当にそんな小さなブラックホールで人間を殺すことは可能なのか?」という興味深い疑問を世に投げかけました。

この「小さなブラックホール」は、もしかすると宇宙の暗黒物質(ダークマター)の一部かもしれない、という仮説も存在します。

しかし、観測事実や理論から、一定の質量以下はすでにホーキング放射ですっかり蒸発してしまっているはずだ、といった推測もあり、実際に観測されたことはありません。

もし本当に存在するとしても、その数はとても少ないと考えられています。

アメリカのヴァンダービルド大学(VU)で行われた研究では、この疑問に対して真面目に取り組み、人間を殺せる最も小さいブラックホールの数値が計算されました。

人間に対するブラックホール被害を考察した本研究は、実用性という点では皆無かもしれませんが、物理学理論の探求という面から考えれば興味深いと言えるでしょう。

研究内容の詳細は2025年2月13日にプレプリントサーバーである『arXiv』にて公開されました。

目次

  • ブラックホールを使った殺傷方法を考える
  • ブラックホールが人間に命中する確率

ブラックホールを使った殺傷方法を考える

人間に当たっても大丈夫なブラックホールのサイズや重さを調べた研究が発表
人間に当たっても大丈夫なブラックホールのサイズや重さを調べた研究が発表 / Credit:Canva