小さなブラックホールが人体を突き抜けるとき、果たしてどんなダメージを与えるのでしょうか。

研究チームは、大きく分けて 「ショック波(衝撃波)」 と 「潮汐力(ちょうせきりょく)」 の2つが主な原因になりうると考えました。

ショック波(衝撃波)による破壊

ブラックホールは、直径が1マイクロメートル以下という超小型でも“質量”そのものは大きい(小惑星級)場合があります。

そんな“超重い点”が音速をはるかに超える高速で体を通過するとき、その周囲の組織に強烈な衝撃が伝わります。

これは、ちょうど銃弾が肉体を貫く際に組織へエネルギーを与えるイメージに近いものです。

極小のブラックホールは確かに塵サイズしかなく、そんな小さなものが人体を貫通しても、(動脈などが無事ならば)運が良ければ生き残れると思うかもしれません。

しかし弾丸が肉体に及ぼすダメージは、弾丸が通り抜けた場所に留まらず、その周辺組織も衝撃によって破壊されてしまうことが知られています。

たとえば大きな50口径の弾丸がコメカミをかすめて表面の皮膚を切り裂いた場合でも、脳に致命的な破壊が起こる可能性があります。

これは重たい物体が高速で組織に接触したことで強烈な衝撃が発生し、その衝撃が脳を破壊してしまうからです。

(※太ももの両側に指をあてて、右側をポンと軽くたたくと、かなりの衝撃が左手側に届くことがわかります。この右手側の衝撃が十分に強ければ、表面の皮膚をかすっただけで太もも全体の細胞を破壊することが可能です)

同様に、塵サイズのブラックホールであっても、人体を貫通した場合には、貫通孔の周りの組織を強烈な衝撃波で破壊できると考えられます。

衝撃によるダメージは、組織に「どれだけのエネルギーを与えるか」がカギになります。

銃の弾丸の場合、おおむね100ジュール(J)程度のエネルギーが人命に関わるダメージを与えるとされています。

(※小さな22口径の弾丸の威力が100ジュールほどと言われています)