しかしながら、問題点が何もなかったわけではない。
後半22分、北川を下げ、新加入のブルガリア人FWアフメド・アフメドフ投入を合図に、高木をセンターバックとする3バックに変更。これに対し東京VはMF翁長聖、FW白井亮丞を投入し、徐々にボールを支配し始める。1点差を守り切りたい秋葉監督の思いが強かった故でもあるのだが、この試合に関して言えば、それまでほぼ完璧に見えたバランスを自ら崩しに行くような采配には疑問も残った。
守り切るという選択をしたことで、プレーオフの悪夢がよぎった清水サポーターも多かったはず。アフメドフがなかなか見どころのあるポストプレーを見せ、カピシャーバも疲れ知らずのチェイシングでチームに貢献し、乾も終盤の交代まで走れていただけに、2点目を狙いに行く姿勢が今後の課題となろう。
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粋な起用も見せた秋葉監督
後半40分には、2年前のプレーオフ決勝でPKを与えてしまったDF高橋祐治にも出番を与え、“トラウマ”を払拭させる粋な起用も見せた秋葉監督。さらに後半48分には3枚替えを決行し、大津高校のエースとして先月まで全国高校サッカー選手権に出場していたMF嶋本悠大をプロデビューさせた。
嶋本は、まだ卒業式を終えていないため立場的には高校生であり、体にも線の細さを感じさせるが、5分弱の出場時間にも関わらず、試合の流れを呼んでベテランのようなボールキープを披露し、テクニックとサッカーIQの高さを感じさせた。同時に、ピッチに入るなり自陣深くでファールを犯し、相手にFKのチャンスを与えてしまったDF吉田豊とは対照的だ。嶋本の堂々としたプレーぶりには、秋葉監督も「末恐ろしい」と賛辞を惜しまなかった。
この日、ベンチ入りしたものの出番のなかったMF松崎快や、キャンプから絶好調をキープしているFKドウグラス・タンキ、さらにはベンチ入りがならなかったMF矢島慎也、新加入のMF小塚和季、プロ2年目のFW郡司璃来も控えている。出場機会を巡る高いレベルでの競争が繰り広げられているのだ。