形状だけで流れを制御するため、テスラバルブは一般的なバルブと比べて非常に耐久性が高くメンテナンスフリーの装置として注目されています

実際これを利用した道具の製作や、利用の検討などはいろいろされてきました。

しかし、この装置の徹底的な流体力学的調査は実はまだ行われていませんでした。

そこで今回、ニューヨーク大学クーラント数理科学研究所の准教授レイフ・リストロフ氏を始めとした研究チームが、本格的な調査を行ったのです。

その結果、テスラバルブには、これまで考えられていなかった機能や可能性があることが明らかとなったのです。

電気の魔術師テスラが実現しようとしていたこと

研究チームはまず、30センチほどのテスラバルブを実際に作成し、その機能を理解するために2つの流れを通す際の抵抗を測定しました

チームは、流体の研究でよく使われる2色の流層を流して、その流れを見ています。

そして、実験の際、流体の圧力を調整して、流れる速度をゆっくりから徐々に速くして調べてみました。

青と緑、2つの流れを逆方向にテスラバルブへ流した場合の測定。上から順に、流体の速度を増やして実験している。濃い緑色の部分は青と緑の流れが乱流となってほとんど流れていない状態。
青と緑、2つの流れを逆方向にテスラバルブへ流した場合の測定。上から順に、流体の速度を増やして実験している。濃い緑色の部分は青と緑の流れが乱流となってほとんど流れていない状態。 / Credit:New York University

すると、上の画像のように、ゆっくりと流体が流れた場合、流れの抵抗は逆方向に流してもほとんど発生しませんでした。

しかし、ある流速を超えると、突然装置にスイッチが入ったように乱流が発生し、逆流を大幅に抑制したのです。

しかも、流れに抵抗が発生する流速は非常に低速から起こります。これは流れを制御する力がかなり強いことを示すものです。

ここまではこれまで知られていたテスラバルブの機能をより詳細に明らかにした報告です。

ただ研究チームはその先で、さらに驚きの発見をしたのです。

研究チームを驚かせたのは、テスラバルブが、普通の流れではなく、流体が振動するような動きをしたときに、より効果的に機能したことです。