鹿児島では明治以前から青少年の修練場での行事などで「豚骨(とんこつ)」と呼ばれる郷土料理を男性が作ってきました。「豚骨」はぶつ切りにしたスペアリブを焼き、芋焼酎で炒りつけてから大根やコンニャクなどと一緒に柔らかく煮込み、味噌や砂糖で味付けした料理です。

鹿児島県の郷土料理「とんこつ」は男性が調理してきた
鹿児島県の郷土料理「とんこつ」は男性が調理してきた / Credit: 農林水産省

豚骨は薩摩藩士が狩場や戦場などで作った野外料理がはじまりです。なるほど、男手で作られる理由も納得です。豚骨は西郷隆盛も好物だったと言われています。

好物ということは、比較的よく食べていたということではないでしょうか。

豚肉に多く含まれるビタミンB1は水溶性なので、煮込んだ汁にもビタミンB1がたっぷり溶け込んでいたことでしょう。戦闘中のスタミナ食としてはぴったりですね。

戦場でも豚肉の料理を食べていた薩摩藩士。干し飯や味噌などが携行食だった藩もあったでしょう。そこにスタミナ食の豚肉を煮込んだ豚骨などを食べていた薩摩藩士が立ちはだかったら……。

想像したくないですね。勝てる気がしません。薩摩藩士には目の前に立ちはだかられたくないと思います。

ところで、江戸時代には参勤交代があり、藩ごとに江戸に藩邸というお屋敷を構えていました。力も信用もある藩は江戸城に近く良い位置に広い藩邸がありました。

1995~ 1997年、東京都港区にあった江戸時代の薩摩藩、島津家の芝上屋敷の発掘調査が行われた際に面白い結果が出ました。

ちなみにこのお屋敷跡は、都営地下鉄三田駅付近から日本電気本社ビル、ホテル ザ セレスティン東京芝、戸坂女子短期大学などを網羅する大変広いものでした。13代将軍徳川家定に輿入れするため江戸に入った天障院篤姫が江戸での暮らしを始めた場所でもあります。

これだけ広いと江戸にいながらにして薩摩だったのではないでしょうか。篤姫様は、江戸に来た実感はあまり湧かなかったかもしれませんね。