……そうした時代に持続可能なフェミニズムを模索する、柴田英里さんとの対談が、広く読まれることを願っています。あと2/16の配信と、あまりに予見的に過ぎる以下の2021年の書物も、よろしくお願いします!
〝二十世紀はナチスを持ち、さらに幸ひなことには、ナチスの滅亡を持つたことで、ものしづかな教養体験と楽天的な進歩主義の夢からさめて、人間の獣性と悪と直接的暴力に直面する機会を得たのである。これなしには、人間はもう少しのところで人間性を信じすぎるところだつた。〟
平成で言い換えれば、21世紀はトランプを持ったことで、もう少しのところで民主主義を信じすぎることから免れた、となるでしょう。そしてトランプ的なものもまた「幸ひなこと」に滅んでゆくのかどうかは、トランプ自身が2020年に再選を阻まれたいまでさえも、皆目わからない状態にあります。
映像作家はナチズムの過去を「巨大なスケイプ・ゴート」「悪を描く免罪符」に用い、ナチスの蛮行を告発するという大義名分で、自身の内なる邪悪さを解き放つというのが三島の論旨でした。しかし2016年以降の世界ではむしろ、虚構のセカイで発散されてきたはずの「既成秩序の全否定」への欲求が、現実の政治に溢れ出ていったのです。
拙著『平成史』479-480頁 ” ” 内は三島の引用
(ヘッダーは『地獄に堕ちた…』の著名なシーン。シネマトゥデイより)
編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2025年2月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください。