しかし、リントナー氏は妥協せず、退場。緑の党好きのメディアの自民党評は、「妥協できないダメ政党」から、「政治をしたくないダメ政党」に変わった。

ただ、自民党の予見していたことは、その後の8年間でことごとく現実となった。特に、21年、アンペル政権ができてからは、経済の崩壊に拍車がかかり、緑の党と社民党の目的は産業破壊であったかと、皆が疑い始めている。

ただ、緑の党と社民党が破壊したのは産業だけではなく、自民党も木っ端微塵に破壊された。ドイツでは2月23日に前倒しの総選挙が行われるが、自民党はすでに見る影もないほどの落ち込み方だ。

2月6日に第1テレビが発表した世論調査(infratest dimap)では、1位がCDU/CSU(31%)、2位がAfD(21%)、3位が社民党(15%)、4位が緑の党(14%)、5位が左派党(5%)。しかし、自民党は4%で、このままだと国会から脱落。ドイツは、ワイマール時代に小党乱立で政治が機能しなくなったことへの反省から、得票数が5%未満の政党は、議席を持てないことになっている(5%条項)。

かつての自民党は、小党といえども存在感があった。元はといえば、中堅企業の経営者などを強力な支持者層に持つ党だ。16年間のコール政権を支えたのも自民党だったし、特に、東西ドイツ統一の際のゲンシャー外相の活躍は歴史に残るといっても過言ではない。

それが、レッド・グリーンという2つの左翼政党と連立したがために、公約を次々と破らざるを得なくなり、失望した支持者が離れた。2017年に無理な連立を拒絶してメディアに非難された自民党だが、21年は無理は承知で連立に踏み込んで、罠に落ちた。結局、皆が潰そうとしているAfDは潰れず、自民党が瀕死だ。

では、2月23日の選挙はどうなるか?

第1党のCDUは、左傾した政治を保守に戻し、それどころか経済の立て直しのため原発を再稼働させるとか、治安回復のため移民・難民政策を厳格化するなどと大口を叩いている。それらはAfD、および自民党のかねてよりの主張でもある。