つまり、マッハカットオフは「音速を超えれば必ず大きなソニックブームが出る」という従来の常識を覆す、大気の屈折効果をうまく利用した現象なのです。
これが実用レベルで広がれば、陸上でも安心して超音速旅客機が飛び交う未来がやってくるかもしれません。
超音速を出してもソニックブームが地上に届かないことを確認
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Boom Supersonic社による実験機「XB-1」の初の超音速テスト飛行は、2025年1月28日に行われました。
このフライトで、XB-1はマッハ1.12程度まで加速し、3回にわたって音速の壁を突破したと報告されています。
続く2月10日にもテスト飛行が実施されました。
ソニックブームの有無を客観的に検証するために、飛行経路の下方に複数のマイクロフォンアレイが配置されました。
これらの特殊なマイクロフォンは、音量だけでなく衝撃波の特徴的な波形を高精度で記録できるように設計されています。
結果、XB-1が超音速に達したにもかかわらず、地上ではソニックブームのピーク音圧を検出できず、「人間の耳で認識できるほどの爆音が到達しなかった」ことが確認されました。
Boom Supersonic社は今回の実測データをもとに、従来のソニックブーム伝播モデルや、自社開発の「マッハカットオフ解析アルゴリズム」を比較検証しています。
テスト飛行で集められた実測値は、シミュレーションで予想された“Boomless Cruise”の条件とほぼ一致しており、衝撃波が地表まで届かない可能性を裏付ける形となりました。
こうした正確な大気・音響データの取得によって、マッハカットオフの発生をさらに細かく予測・制御できるようになったと報告されています。
ただ、マッハカットオフ飛行はいいことばかりではありません。
マッハカットオフ飛行の際には通常の亜音速や超音速飛行よりも燃費が悪化することが知られています。