かつて「超音速飛行=ソニックブーム」は切り離せない関係と考えられていました。
音速(マッハ1)を超えると発生する衝撃波は、地上まで届くほどの大音響を伴い、窓ガラスが割れるなどの被害をもたらすこともあります。
このため、コンコルドのような超音速旅客機は海上を中心に運航するしかなく、陸上での高速移動は実現が困難だとされてきました。
しかし最近、航空技術の新たなブレイクスルーが「超音速飛行はうるさい」という従来の常識を覆そうとしています。
アメリカの航空ベンチャー企業・Boom Supersonic社が開発した実験機「XB-1」が、地上にソニックブームを響かせることなく音速の壁を突破したと報告したのです。
彼らはこの「静かな超音速飛行」を可能にする仕組みを「Boomless Cruise」と名付け、背後には“大気の屈折”を利用した「マッハカットオフ」という重要な物理現象が存在すると説明しています。
このニュースが注目を集めるのは、もし騒音問題が克服されれば、陸上でも超音速移動が解禁される可能性が出てくるからです。
長年、超音速旅客機の普及を阻んできた最大の障壁であるソニックブームが抑えられれば、世界中の航路で高速化が一気に進むかもしれません。
本記事では、こうした新技術の概要とマッハカットオフのメカニズム、さらに最新の実験結果や今後の展望について解説していきます。
詳細はBoom Supersonic社のホームページにて公開されています。
目次
- 音速と衝撃波の歴史
- マッハカットオフのメカニズム
- 超音速を出してもソニックブームが地上に届かないことを確認
音速と衝撃波の歴史

超音速飛行は、かつてコンコルドが実現したように大きな期待を集めましたが、その際に問題となったのがソニックブーム(衝撃波による大音響)です。