他にも欧州クラブを渡り歩いた元日本代表FW本田圭佑や、日本代表DF長友佑都(FC東京)も、移籍する度に連帯貢献金が発生し、本田に関してはG大阪ジュニアユース、石川県星稜高校、名古屋グランパスに、長友に関しては東福岡高校と明治大学に臨時収入が発生した。

しかし長友の場合、セリエAチェゼーナからインテルに移籍する際、本来であれば卒業した西条市立神拝小学校と西条市立西条北中学校がそれぞれ約42万円と約127万円が得られたのだが、書類をすべて英語で作成しなければならないなどの煩雑な手続きや、公立校ゆえの会計処理の面倒さなどが絡み、申請しなかったという。

2010年に鹿島アントラーズからブンデスリーガのシャルケに移籍した元日本代表DF内田篤人の場合でも、出身の清水東高校は静岡県立校であることから、多額となる現金を管理できないために申請しなかった。

宮市亮 写真:Getty Images

請求しないケースはあまりにももったいない

連帯貢献金制度は欧州や南米では定着し、選手を育てるモチベーションとなっている。学校の部活動が育成組織も兼ねている日本の事情には合わないところもあるが、育成に使える資金をゆめゆめ逃がしている現状は、あまりにももったいないと感じる。

街クラブではコーチがボランティアであることなどザラで、部活動に関しても教師の“ブラック残業”や保護者の手弁当によって支えられている側面がある。仮に連帯貢献金を受け取る権利が発生すれば、伊東の母校の逗葉高校のように堂々と申請し、クラブや学校に還元すればいいのだ。日本サッカー協会(JFA)も育成を重視するならば、この手続きを手引きする施策が必要だろう。

中京大中京高校から直接渡英し、アーセナルでプロキャリアをスタートさせた元日本代表FW宮市亮(横浜F・マリノス)の場合、12~15歳まで所属した名古屋市の街クラブであるシェフィールドFCジュニアユースに508万円、中京大中京高校に3,429万円の連帯貢献金が発生した。しかし実際は、中京大中京高校はこれを請求しなかったという。