これらを総合的に調べることで、「ルテオリンなどの抗酸化物質が本当に白髪化を抑えられるのか」「もし効果があるなら、どういう仕組みでそれを実現しているのか」を深く理解しようとしたのです。

研究チームはさらに統計的手法(マン・ホイットニーU検定など、複数のグループ間の違いに意味があるかどうかを調べる方法)を使って、結果の信頼性を高めるように分析を行いました。

結果、抗酸化物質を与えたマウスで最も白髪が抑えられたのは、ルテオリンを投与したグループでした。

具体的には、ルテオリンを背中の皮膚に塗ったマウスでも、口から与えられたマウスでも、白い毛の増加がはっきりと減少したのです。

反対に、ヘスペレチンやディオスメチンを皮膚に塗布したグループでは、顕著な白髪抑制の効果は見られませんでした(いずれも外用のみで検証)。

さらに詳しく調べると、ルテオリンの効果は単に白髪の見た目を抑えるだけでなく、毛根の幹細胞そのものを保護している可能性が示唆されました。

髪の色素を作るメラノサイト(メラニン色素を生成する細胞)の元であるメラノサイト幹細胞(MSC)が、ルテオリン投与群では減少しにくかったのです。

また、細胞の老化を示すp16^INK4a(ピー・シックスティーン インクフォーエー)というタンパク質の増加も抑えられ、細胞が“若々しい”状態を維持していると考えられます。

一方、毛の生え変わりの周期(毛周期)については、ルテオリンを使っても大きな変化はなかったと報告されています。

つまり、髪そのものの成長速度などを劇的に変えるわけではなく、「髪の色を保つ作用」に特化している可能性が高いというわけです。

これらの結果を総合すると、ルテオリンは酸化ストレスを抑えながら、毛髪の幹細胞や色素細胞の老化を遅らせることで、白髪化を防いでいると考えられます。

他のフラボノイド(ヘスペレチン、ディオスメチン)には見られなかった現象であることから、ルテオリン特有のはたらきが存在することが強く示唆されました。

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左側がルテオリンなしのマウス、右側がルテオリンありのマウス。ルテオリンを与えられたマウスでは明らかに白髪化が抑えられています/Credit:Machiko Iida et al . Antioxidants(2024)