こうしたプロセスが、孤独(Solitude)に見いだされるポジティブな意味合いといえるでしょう。
一方で、寂しさを示す“Loneliness” という単語には、“他者とのつながりを求めているのに得られない苦痛” という、強い主観的な感情が含まれています。
たとえ周囲に人がたくさんいたとしても、自分を理解してもらえない、自分だけ仲間外れになっていると感じる、といった状況で起こるのが典型的な “Loneliness” です。
この感情は、社会神経科学の分野で多大な研究を行ったジョン・カシオッポ(Cacioppo, 2008)の一連の研究でも強く取り上げられています。
彼は、寂しさ(Loneliness)を感じるとストレス反応が高まりやすく、メンタルヘルスだけでなく、血圧の上昇や免疫機能の低下など、身体的な健康面にもデメリットが生じる可能性を指摘しました。
つまり “Loneliness” は、心身に大きな負担をかけるリスク要因にもなり得るのです。
もう一つ注意したいのは、寂しさが必ずしも「ひとりでいる時間」にだけ起こるわけではない点です。
人混みの中や友人・家族と一緒にいても、心のどこかで「誰も自分を理解してくれていない」と感じれば、その人は孤独感=“Loneliness” を抱くことになります。
これは、客観的な「人の数」ではなく、主観的な「満たされている感覚」が大きな鍵になることを示唆しています。
日本語で「孤独」「寂しさ」と訳した場合、“Solitude” と “Loneliness” が厳密に区別されず、一括りに「孤独」「寂しい」と表現されることが少なくありません。
結果として、「孤独=ネガティブ」というイメージが先行してしまい、“ひとりでいることそのものが悪いこと” のように捉えられがちです。
しかし、前述したように “Solitude” と “Loneliness” は科学的に異なる概念であり、ひとりでいること自体がいつでも辛く、寂しい状態を生み出すわけではありません。
孤独のポジティブな側面:ひとりの時間がもたらす恩恵
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