『メディアの支配者』(講談社文庫)中川一徳
3. 「内輪の代表」か「国際的視野のある改革派」か?という定番の課題
ここからは、もっと深堀りして「この事件が持つ意味」を考えていきたいんですが・・・
後継者の春雄さんと宏明さんって、かなり毛色の違う経営者なんですよね。
春雄さんは、なんだかんだ「コンテンツ作りに理解がある」タイプなんですよね。ウィキペディアの春雄さんの部分には以下のように書かれています。
編成局長に当時42歳の日枝久を抜擢[9]、フジテレビ内の大改革を行う[8][11]。編成と制作を統合させ、編成(主)→制作(従)という編成主導体制(大編成局構想)を作り上げ、より世間の空気感や視聴率を意識した番組作りをスピーディーに行えるようにした[11]。この斬新な機構改革により、フジテレビは『オレたちひょうきん族』などの看板番組を次々打ち出し、視聴率三冠王を達成した[8][11]。
一方で、宏明さんは元興銀マンで国際金融に詳しく、海外メディア企業のM&Aなどで手腕を発揮していた様子が、『メディアの支配者』の中に詳細にかかれていました。
でも宏明さんは、ちょっと「社内政治」的な部分の配慮が弱いタイプで、結構強引に人事を行ったりして、また国際M&Aのために必要だからヘッドハントしてきた人材が「宏明の取り巻き」的な振る舞いをして反感を買ったりして、それが日枝久グループからの「反感」を買ってクーデターの原因になったところがある。
これ、結構「党派的」にどっちかの肩を持ちたくなる話題ですよね?
実際、産経新聞OBで当時存命中だった司馬遼太郎は断然断然「春雄さん派」というか、宏明さんが嫌いで、日枝氏のクーデターが実現したあと興奮して「これで産経は良くなりますね!」っていうFAXを大量に送ってきたそうです(笑)
単に傍観者として論評するだけじゃなくて、「これを機会に徹底して宏明さんを追い出すべき」と司馬遼太郎が言いまくって、結果として宏明さんは「末席の役員」みたいな影響力も完全にない状態ま徹底的に追い込まれることになります。