どうすれば腸内細菌たちの悪影響を先延ばしにできるのか?

ひとつの大きなカギは、免疫システムがしっかりと働ける土台を作ることです。

適度な運動や十分な睡眠はもちろん、ストレスをうまくコントロールすることで、免疫機能の負担を軽減できます。

さらに、食生活では腸の粘膜バリアを補う栄養素を積極的に取り入れ、過剰な糖質や高脂肪食を避けることで、細菌叢が偏りすぎるのを防ぐ手がかりとなります。

また、むやみに抗菌薬を使用しないこともポイントです。

病原性の微生物を抑えようとすると、善玉菌まで一緒に排除してしまい、かえってディスバイオーシスを招くリスクが高まります。

最新の研究では、特定の細菌だけをピンポイントで制御するファージ療法や、“次世代型”のプロバイオティクスの開発が検討され、腸内環境を効率的に整える選択肢が増えつつあります。

他の有望なアプローチとしては、若い人たちと積極的に交流することです。

私たちは日々、周囲の人々から微生物を受け継いでいます。

若い人たちの健全な腸内細菌は、比較的新鮮でエネルギー効率の良い状態にあるため、共生することで体内のディスバイオーシスの進行を遅らせる効果が期待されます。

さらに、近年注目されている「糞便微生物移植(FMT)」は、若い腸内細菌叢を高齢者に導入することで、腸内環境をリセットし、老化の進行を抑制する可能性があります。

腸内細菌叢の管理は、単なる「健康の象徴」ではなく、私たちの体全体のバランスを左右する極めて複雑な問題です。

今後、私たちがどのようにしてこの微生物との共生関係を最適化し、老化を遅らせるかは、科学界だけでなく、一般の私たちにとっても重要な課題となるでしょう。

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元論文

Host control of the microbiome: Mechanisms, evolution, and disease
https://doi.org/10.1126/science.adi3338