先にも述べたように、腸内細菌叢や善玉菌たちは、存在するだけで致命的な感染から私たちを防御してくれます。

また、いくつかの菌では、ビタミンを供給したり、精神を安定させたり、認知能力を強化するなど、オプション的な利益ももたらしてくれます。

なにより、実験用マウスのように生まれてから死ぬまで無菌環境が提供されていない現実では、腸内細菌叢を手放すのは自殺行為です。

重要なのは、今までの「善玉菌神話」にとらわれず、彼らの真の姿や存在する目的を考え直すことです。

そのためには、腸内細菌叢やその中の善玉菌たちは、単なる「善良なヒーロー」ではなく、「利己的な金貸し」のような存在と捉えるべきかもしれません。

双方の利益が一致している場合、彼らは少ない利子(わずかな寿命マイナス)で致命的な感染から守ってくれます。

また、オプションとして精神安定効果や認知機能の増強など、場合によっては人生や寿命にプラスになる贈り物もしてくれます。

(※ただし、無菌マウスの実験からわかるように、多くの場合、贈り物による寿命延長効果は利子を超えません。)

しかし、人間が高齢になり弱ってくると、取り立てが強化され、次第に求められる利子が増加し、老化を促進する原因にもなり得ます。

致命的な感染から守ってくれる効果や有益なオプションはかろうじて提供され続けますが、完全に無菌環境で生活している場合と比べて、老化が目立ち始めるのです。

そして最後に、人間が死んでもしまった場合には、乱暴に負債を回収するかのように人間の体を食べ始めます。

(※極端な例として、カードゲームの説明欄のように書けば……「わずかな寿命をコストとして捧げることで、危険な病気から命を守ったり、有益な贈り物をくれる。ただし、高齢になると捧げなければならない寿命コストが無視できない量になっていく。そして、死後の肉体は彼らに捧げられる。彼らは腸を食い破り、全身を食い尽くす」と、ある意味で悪魔契約的なものになるでしょう。)

「善玉菌の悪影響」を防ぐにはどうすればいいか?

腸内細菌叢の善玉菌も老化を促進する場合がある「不都合な真実」
腸内細菌叢の善玉菌も老化を促進する場合がある「不都合な真実」 / Credit:Canva