さらに、ウイングバックやサイドハーフもこなせるFW岩崎悠人をシャドーストライカーあるいはセンターフォワードに。シャドーストライカーだったMF金森健志をトップ下に。ウイングバックやサイドバックが本職だったDF湯澤聖人やDF小田逸稀をサイドハーフに。

高いレベルでのポジション争いが現在進行形で行われており、トップ下が鹿島アントラーズから移籍してきたMF名古新太郎になるか、東京ヴェルディから来たMF見木友哉になるかも含めて、開幕スタメンの名前はおろか、フォーメーションすら予測できない。

前任の長谷部茂利前監督が、どちらかといえば選手の特性を見極めた起用をするタイプだったことを考えると、チームビルディングが180度変わった印象。ベテランも若手も国籍も関係ない、まさに横一線の競争を促している。サポーターからも概ね好意的に受け止められ、新生アビスパがベールを脱ぐ日を心待ちにしている。

知念慶 写真:Getty Images

コンバートの成功例

昨季、鹿島でセンターフォワードからボランチにコンバートされて成功した前述の知念は、川崎フロンターレ(2017-2022)ではなかなか層の厚いFW陣に割って入ることができず、レンタル移籍先の大分トリニータ(2020)でも結果を残せず、選手として頭打ちの状態にあった。

ランコ・ポポヴィッチ元監督(2024)は負傷欠場したMF柴崎岳の代役に知念を抜擢。もう1人のボランチが現在ブンデスリーガのマインツでレギュラーを張っているMF佐野海舟だったという幸運もあったが、フィジカルを生かしたデュエル勝利数はJ1リーグ最多の138回を数えた。

ポポヴィッチ監督は2024シーズン途中に成績不振で鹿島を解任されたが、知念が持つポテンシャルを見抜き、コンバートを告げられた本人も驚くような起用法によって、思わぬ形でキャリアのピークを迎えた。もちろん本人の努力もあるが、思い切ったコンバートに踏み切った同監督の慧眼には恐れ入ったというしかない。